思春期の“生と性”

日本思春期学会認定性教育認定講師による正しい性の知識を提供します。

LGBTQ+の基礎知識

私は小児科専門医&アレルギー専門医&性教育認定講師の資格を持っています。

性教育関連の某セミナーを視聴していてLGBTQ+に関する「e-learning」があることを知りました。レクチャーを視聴してミニテストをクリアすると、「Ally」(アライ)を表明できる、というシステムです。

ちょうど先日、「52ヘルツのクジラたち」という映画を観て思うところがあり、興味を持って視聴し始めましたが、私の思い込みを補正し、かつ知識を足してくれる有用な内容でした。そしてミニテストは全問正解しなければ次に進めず、結構難しい。

一応すべてクリアして「Ally」を表明できる資格を入手しました。勉強になった内容を備忘録として残しておきます。

LGB(性的指向)とT(性自認)は別の概念・分類なので、両方に当てはまることもあり得ることを初めて知りました。つまり、L&BやG&Bなどもあり得るということ。

小児科関連学会での講演では「最近はLGBTQという言葉よりSOGIという単語の方が多く使われるようになってきた」と耳にするようになりました。

何しろ、ちょっと複雑な知識体系なので、時々振り返り確認する必要がありそうです。

 

<シリーズ内容>

1.LGBTQ+の基礎知識
2.LGBTQ+と健康問題
3.LGBTQ+と医療問題
4.LGBTQ+と医療問題:カミングアウトへの対応
5.LGBTQ+と医療問題:医療者側から当事者への質問集
6.LGBTQ+と医療問題:医療者同士のQ&A集

 

▶ LGBTQ+の頻度

・日本国内の調査では3〜10%

 

▶ LGBTQ+とは

L(レズビアン):女性同性愛者(性自認・性的指向がともに女性)

G(ゲイ):男性同性愛者(性自認・性的指向がともに男性)

B(バイセクシャル):両性愛者(男女いずれも恋愛・性愛の対象となる)

T(トランスジェンダー):出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる

 ※ シスジェンダー:出生時に割り当てられた性別と性自認が一致している

Q(クィア):性的マイノリティを広く指す言葉として主に当事者に用いられる

Q(クエスチョニング):セクシュアリティを決めたくない、探索中の人

 

▶ LGBTQ+の意義

・その性のあり方を生きる人が声を上げるために、社会に届けるために、自分たちを表すために、連帯するために使い始めた言葉。

・たくさんの性のあり方を表す言葉がある。

(例)パンセクシュアル、A型陽性。セクシュアル、アロマンティック、エックスエンダー、ノンバイナリー、ジェンダーフルイド、etc・・・

・「自分がありのままで自分」と言えるために使う言葉

 

▶ LGBTQ+の内容

・LGBは「性的志向」(Sexual Orientation, SO)に関する話

・Tは「性自認」(Gender Identity, GI)に関する話

・QはSOとGIどちらも含む性の多様性全体を表す。Qに+をつけて、LGBTの他にもある多様な性のあり方を示す。

・セクシュアルマイノリティ(性的マイノリティ、性的少数者)の総称としてLGBTQ+という用語が使われることもある。

 

▶ SOGIという言葉

・SO(性的指向)、GI(性自認)はLGBTQ+かどうかに限らず、すべての人に関わること。

Sexual Orientation:性的指向・・・恋愛や性愛の対象となる性

Gender Identity:性自認・・・自分の性をどう認識しているか

 

▶ セクシュアリティを理解する〜性のあり方を分解して考える

1.性自認:GI(Gender Identity)こころの性

・自分の性をどう思うか

・自分にとってしっくりくる性

2.生物学的性:からだの性

・出生時に指定された性:Sex Assigned at birth

・身体的・生物学的な性:Biological Sex  → トランスジェンダーでは薬物療法(ホルモン療法)や外科的療法で変化がある場合あり

3.性的指向:SO(Sexual Orientation)好きになる性

・恋愛や性愛の対象となる相手の性

4.性表現:Gender Expression  → 見えるのはここだけ

・身なりや言動や素振りなど外見に表現する性

 

▶ 性のグラデーション

上述の性自認(こころの性)、生物学的性(からだの性)、性的指向(好きになる性)、性表現はすべて、男女の二元論だけでは語れないグラデーションである。

 

▶ 医療とLGBTQ+の歴史

・多様な性のあり方を「精神病理」の枠組みで捉えて「治療」しようとしていた過去がある。

 → 性自認・性的指向そのものを変えることは、いかなる場合においても治療対象ではない。強引に進めると、うつ、不安障害、自殺など深刻な被害をもたらす。

・病理化(疾患・傷害として定義)した過去と脱病理化(多様な性のあり方として捉える現在)の歴史。

・医療がLGBTQ+の人々に対するスティグマ・偏見を作り出した歴史があり、現在も影響が残っている。

 

▶ 医療とLGBTQ+の歴史:同性愛(性的指向、Sexual Orientation, SO)

・DSM-IIまでは「同性愛」は精神疾患リスト内に

・1987年:DSM-III-Rで完全に削除 → 脱精神病理化

 WHO「同性愛はいかなる意味でも治療の対象とならない」

 

▶ 医療とLGBTQ+の歴史:トランスジェンダー(性自認、Gender Identity, GI)

(DSM)

1980年:DSM-III  Gender identity disorder(性同一性障害)

2013年:DSM-V  Gender dysphoria(性別違和) → 脱障害化

(ICD)

〜ICD-10までは精神及び行動の障害

2018年:ICD-11  Gender incongruence(性別不合)

 Conditions related to sexual health に → 脱精神病理化 

 

▶ DSD(Disorders of Sex Development、性分化疾患)

・「からだの性」のグラデーション

・DSDs:Differences of Sex Development, からだの性の様々な発達、と呼ばれることもある。

・性分化の過程で、染色体 → 性腺 → 外性器の性が発達するプロセスのどこかが非典型的である状態、と定義される。

・いくつかの疾患を総合した用語

(例)Turner症候群、AIS(アンドロゲン不応症)、CAH(副腎過形成)など数十の疾患群

・DSDを持つ人々にとって「中性」「男性でも女性でもない」と表現されることは重大な心的被害をもたらすことがある。

・DSDの人々の中にも性自認や性的指向の多様性がある場合もあるが、そうでない場合、LGBTQ+の文脈で語られたくないと感じる人もいる。

 

▶ 社会でLGBTQ+の人は様々な差別や困難に直面する

・異性愛や男女二元論を前提とした社会では、LGBTQ+の人々は様々な場面で阻害されやすい。

1.教育現場

・学校でのいじめや不登校の経験

2.就労

・職場での性自認・性的指向を理由としたハラスメント

3.婚姻

・同性同士の二人の間で婚姻関係を結ぶことができない

・同性パートナーの子どもの親権を得られない

4.医療

 

・・・今回はここまでにします。次回以降、健康問題・医療問題について記す予定です。