思春期の“生と性”

日本思春期学会認定性教育認定講師による正しい性の知識を提供します。

LGBTQ+と医療問題:医療者側から当事者への質問集

LGBTQ+の e-learning のレクチャー内容から、基礎知識、健康問題、医療問題、カミングアウトへの対応、と記してきました。

前回、「患者側が困っている、医療者側も困っている」と書きましたが、今回はその医療者側からの質問と回答を扱います。

 

LGBTQ+の方々の生の声を聞いた印象がありました。

とくに「LGBTQ+当事者への対応として考えるよりも、どの患者さんが当事者であっても安心して過ごせる体制を作る」という意見に大きく肯きました。

性感染症を扱う専門医から「同性愛も含めて問診しないと誤診につながる」と聞いたことがあります。

小児科領域で、神経発達症の療育で用いられているスキルは、子育て全般に応用可能で有用である、とされています。これと同じですね。

部屋割りの問題は、学校のトイレと同じで、すべて個室にしてしまうと解決で基礎な気がしました。が、コストがかかりますね。

基本的に「プライバシーを守る」「個人個人で事情が異なるため本人から希望を聞く」ことが大切だと感じました。

 

最後の質問Q6については私自身の問題でもあります。e-learning を修了してAllyを表明できるようになっても、Allyマップに登録することは躊躇されます。理由はまだスタッフに周知していないから。スタッフにも適切な研修を受けてもらい、医院全体の体制が整った時点で登録を考えたいと思います。

昨今の医療現場は「ペイハラ」の脅威にさらされています。こちらが良かれと思ってしたことでも、気に障るとクレームを口コミに投稿され、医療者は落ち込んでしまいます。

Ally表明の条件として、ペイハラ問題の解決(クレームは実名表記とか)も大切だと思います。

 

<シリーズ内容>

1.LGBTQ+の基礎知識
2.LGBTQ+と健康問題
3.LGBTQ+と医療問題
4.LGBTQ+と医療問題:カミングアウトへの対応
5.LGBTQ+と医療問題:医療者側から当事者への質問集
6.LGBTQ+と医療問題:医療者同士のQ&A集

 

▶ LGBTQ+当事者への質問

Q1. LGBTQ当事者の方かも、と思った場合、医療者側から聞いた方がよいのか?

Q2. トランスジェンダーの方が入院する場合、部屋の選択はどのようにするとよいか?

Q3. 直腸診や、婦人科・泌尿器科的な問診・診察をする際、配慮した方がよいことは?

Q4. 身体診察をする際に、服を脱ぐことについてはどのように感じているのか?

Q5. どういう医療機関であれば安心して受診できるのか?

Q6. Allyマップに登録したいが自信がないことについて、当事者の視点でどう思うか?

 

Q1. LGBTQ当事者の方かも、と思った場合、医療者側から聞いた方がよいのか?

・興味本位で聞くことは避けるべき。

・医療を提供する上で必要な情報がある場合には、その旨を説明した上で尋ねる。

・必ずプライバシーが守られる場で聞く。

(当事者からの回答集)

✓ ダイレクトに聞かずに、これまで受けた治療歴や手術歴などを聞くとよい。

✓ 診療上必要なこともあると思うので、プライバシーが守られる場所で理由とともに聞くのはよい。

✓ 聞く意図が分からないと聞かれてもカミングアウトしない。意図を伝えて欲しい。LGBTQ+当事者への対応として考えるよりも、どの患者さんが当事者であっても安心して過ごせる体制を作ってもらえるとうれしい

 

Q2. トランスジェンダーの方が入院する場合、部屋の選択はどのようにするとよいか?

・まず、本人に確認することが大切。

・トランスジェンダーの方は性別移行の段階について多様性があるため、それぞれの状況に応じてどこまで希望に添えるか相談しながら決める必要がある。

(当事者からの回答集)

✓ 個人個人違うので本人に確認して欲しい。特に確認されず男性部屋を割り当てられたり、入院時のネームプレートを自分だけ名字のみにされたりと、嫌な思いをしたことがある(トランス男性)。

✓ 個人によって求めることは異なるし性別移行の段階にもよる。気持ちとしては女性の病棟に入院したいが、現実的にはイビキが男性の声に近いなど気を遣うので、できれば個室に入りたい(トランス女性)。

 

Q3. 直腸診や、婦人科・泌尿器科的な問診・診察をする際、配慮した方がよいことは?

・選択肢を伝えることで受診のハードルが下がり、疾患の早期発見につながることもある。

・異性愛のみを前提としたコミュニケーションをしない。

(当事者からの回答集)

✓ 婦人科で膣からのエコーを肛門からのエコーに代用できると聞き、初めて検査をしてもらったら、進行した病気が見つかった。選択肢があるのなら、最初から教えて欲しい(トランス男性)。

✓ デリケートな部位であり、当事者の複雑な心理もある(性別適合手術を受けていたとしても)。治療や検査方法を説明しながら進めてくれると安心できる(トランス女性)。

✓ 性感染症にかかったとき、泌尿器科医から風俗に行ったのかと言われた経験あり。同性愛の人がいるかもしれないという認識がないのだろうが、異性愛のみを前提とした言い方はやめて欲しい(ゲイ男性)。

 

Q4. 身体診察をする際に、服を脱ぐことについてはどのように感じているのか?

・服を脱ぐことへの抵抗は、LGBTQ+当事者に限ったことではない。必要性の説明と、プライバシーに配慮した対応が求められる。

(当事者からの回答集)

✓ 必要ならば仕方ないが、服を脱いだ状態で並ぶのは精神的につらい(トランス男性)。

✓ 医療として必要なら気にならない。検査などで他の女性と一緒に着替える場面では、気づかれるかもと不安になる(トランス女性)。

✓ 診察場面では特に気にならない。LGBTQ+のみならず、体に見られたくない傷があるなどで個室が欲しい人もいるのではないか。人により違うので本人に確認して欲しい(ゲイ男性)。

 

Q5. どういう医療機関であれば安心して受診できるのか?

・Allyであるサインや情報を医療機関側から示すことが大事。LGBTQ+の取り組みを行うことは、誰もが受診しやすい医療機関作りにもつながる。

(当事者からの回答集)

✓ 病院に入ったとき、レインボーフラッグなどの掲示やAllyバッジをつけた職員がいると安心する。

✓ 一人の患者として自然に接してくれるとよい。LGBTQ+当事者も人それぞれで正解はない。本人に確認し、対応してくれる病院が安心できる。

✓ さまざまな差別・格差に取り組んでいる病院は安心できる。その一つにLGBTQ+があるとよい。それらの情報をHPに公開している病院には行きやすいので、取り組みをしている施設は公表して欲しい。

 

Q6. Allyマップに登録したいが自信がないことについて、当事者の視点でどう思うか?

・「たとえ希望が叶えられなくてもサポートする意思を表明してくれる医療者がいるだけで安心する」」という声は多く寄せられている。

・全国にAlly医療者の輪が広がり、それが可視化される意義は大きい。

(当事者からの回答集)

✓ 「当事者が来ても驚かない」れべるなら登録をしてもらえたらうれしい。トランスジェンダーは受信拒否されることが多く、遠くまで通院している人も珍しくないという切実な状況にある。

✓ 基本を学ばれた医療者であれば、ぜひ意思表明をしていただきたい。すべてを理解してもらえるとは当事者側も思っていないので、聞く姿勢を持ってもらえれば問題ないと思う。

✓ 前向きな姿勢があればぜひ登録して欲しい。カミングアウトしていなくても安心して受診できると思う患者さんが増えるはず。Ally医師が全国にいることが可視化されることで、健康なときでも安心材料になる。